みえる範囲
おばあちゃんに相談をする人が
我が家にはよく出入りしていた
ネットがなかった時代だから
口コミで人が訪ねてくることもあった
おばあちゃんは自分が
今やっているようなことを
孫の中で誰が継げるようになるかを
時折口にしていた
私が小学生になった頃
おばあちゃんは
相談者が来たら部屋にいて
ばあちゃんのやり方を
見ていなさいと言った
おばあちゃんと相談者の
やりとりを見ながら
小学校高学年になった頃
私はおばあちゃんにずっと
抱いていた疑問をぶつけた
そんな風に色々なことが
分かるなら私を含めて
家族のことも分かるんでしょ?
おばあちゃんは笑って答えた
そうだよね、そう思うよね
それがね、自分のことや
家族のことは分からないの
それから真面目な顔になり
説明してくれた
自分や家族のことになると
「こうだったらいいな」とか
「こうでありますように」とか
希望や願いが念に入るから
まっさらな気持ちでいられないから
見たいものしか見えなかったり
自分に都合がいいように
歪めることがあるから
そっか、そういうものかと
納得した