階段からくるもの
気配がする
足音もしないのに
気配だけはする
ベッドの上で
家族を呼ぶ
声の限りに
叫ぶように
連呼する
隣の部屋に
いるはずなのに
聞こえないのか
気配は近づいてくる
階段の踊場を過ぎた
そこからはもう
何段もない
ベッドにいるから天井しか
見えないはずなのに
なぜか階段が見える
姿は見えないのに
空間が澱んでいるから
そこにいるのが分かる
階段を登りきった
気配がした
もう家族を呼ぶのは
諦めた
空気が揺らいで
その気配が色濃くなり
絶叫した
自分の声で目が覚めた
手探りで枕元の灯りを
つける
またこの夢だ
いつも階段からくる
この気配は何者なのか
もう何年も同じ夢を
繰り返し見ている